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variety

生まれてこの方映画を観るという習慣がなかった自分だけど、昨年の一時期、DVDを借りてきてみることにはまっていた時期があった。印象的だったものはいくつかあったけれど、今回は『天然コケッコー』の感想を書こうかな・・。

天然コケッコーは元は日本の漫画でくらもちふさこさんが97年~2000年に書けて連載していたものです。それが映画化され公開されたのが2007年。監督:山下敦弘、主演:夏帆で島根県の田舎を舞台に撮影されました。

こういっていいのかどうかわかりませんが、映画自体は平凡なものでした。劇的なサクセスストーリーでもなく、ドロドロした恋愛ものでもなく、ど根性物語でも激しいバトルがあるわけでもありません。主人公のそよが東京から来た転校生との恋愛と生活風景を描いたものです。
 ストーリー自体に特徴的なものはなく、それどころか効果音も少なく、一カットにかける時間も長く、演出の面で平凡そのものでした。

 ただ、ストーリーも演出もとっても平凡であったのに、私はとっても良い映画だと心からそう思ったのです。

 映画を観ていて感じたのは、普段私たちの日常生活の中にある“面白さ”や“笑い”といったものがとっても人間味あるかたちで表現されていて、普段の人との何気ないかかわりの中にも、こんなにも笑える、おかしいと思えることがあったんだと気づかせてくれるような映画だったと言うことです。
 無邪気に振舞う子どもたち、近所のおばあさんのそっけないけど暖かいユーモアのある言葉、自分の情けない部分も笑いあえる関係だったり。
 登場人物がみな、ドラマの中で変に気を使わずお互いが素に近い状態で関わりあっているからこそ人間味が感じられたように感じたし、映画を観ていて思わずクスッと笑ってしまう部分がとってもたくさんあって、見ていて「あーっ、これが人間にとっての本当の“面白さ”ってものなんだろうな・・」て思いました。

 最近だと、面白いものというものを連想したときに誰もがテレビのバラエティーを連想すると思います。今もお笑いブームといったものがあるのかどうかはわかりませんが、とりあえずこの天然コケッコーの世界の中に描かれていた“面白さ”とはベクトルの違う“面白さ”が今は主流となっているように思えます。

 今のバラエティー番組だと、私自身そんなに見ているわけではないけれど、編集技術を駆使した人工的なものが多い気がします。テロップを使ったり、面白いコメントの部分だけを切り抜いたり、誰かのコメントに対するツッコミの瞬発力とか、やたら下ネタを連発したり、一発芸的なものだったりと、人工的なものであったり、モラル的にどうかと思うものだったり、総じて日常生活の中から切り離された面白さが追求されているような気がします。

 それはそれで面白いものは多いとは思うのだけれど、なにか大切なものを忘れているようなそんな気がするのです。

 天然コケッコーの世界の中にはいろんな人が登場してきます。天真爛漫で時に空気が読めない主人公、口が悪いけれど裏表のない精核のボーイフレンド、そのボーイフレンドにひそかに思いを寄せるナイーブな友人、でまかせを言ってばかりのおばあさん、感情的になりやすい父。それぞれが自然体で関わりあう関係の中にいるからこそそれぞれが個性的であり、だからこそ時に喧嘩やいさかいになったり誤解をしたりとそんなトラブルも生まれます。でもだからとって誰かを排除することもなく最後には笑いあえるような関係を築いている。

 バラエティーと言う言葉は、今の社会の中で一番しっくりくる直訳としては「お笑い」。これは多くの人が同意してくれるんじゃないかと思います。
 しかし実際は、バラエティー(variety)という言葉は“変種”・“変化”や“多様性”という意味です。こうした“変化”や“多様性”という意の言葉がなぜ“お笑い”というイメージが定着しているのか。

 天然コケッコーの世界の中で描かれていたように、人間というのはとっても個性的な存在で、多様な人がいるけれど、それでも一緒に支えあって生きていこうとしているから人間なのだと思います。そんな何もかも違う人間同士が一緒に支えあって生きていくためにきっと“笑い”というものが必要だったのだと思います。時には互いに情けない部分をさらしたり、意見が食い違ったり、裏切ったり争ったりすることもあるけれど、最後にはお互いのそんな姿を受け入れていこうとする中で自然と“笑い”というものが必要だったのではないでしょうか。

つまり多様な人間を結びつけるための潤滑油的なものとして“笑い”というものが存在してきたのであって、それがいつしか多様性=バラエティ=お笑いという風につながって行ったのではないかと思うのです。

そう考えるとバラエティーっていうのはやはり日常生活の中での人間同士の係わり合いの中にこそ根源があって、互いを受け入れあうことに目的があるんじゃないかと思います。

今のテレビでのバラエティーを見ていると、バラエティーを通じて何をしようとしているのかわからないような人もちらほら見受けられるような気がしますが、でもやっぱり息の長い芸人さんとかは大切なことがわかっている人が多いかなって思います。

私自身、日常の中で、本当は面白いことであるのに笑いあえないような出来事はたくさんあります。もっと笑いあえることで解決できるようなこともたくさんあるはず。そういう視点を持つようにしなきゃなって思います。



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