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新しい男性の役割に関する調査報告書(笹川平和財団)にふれて

☆はじめに

 7月に“笹川平和財団”から『新しい男性の役割に関する調査報告書』の結果についてプレスリリースされました。
 この調査報告書は、東アジアの9000名(うち日本は5000名)の男性を対象に行ったwebアンケートによる統計分析によって男性の家事・育児頻度などを規定する要因調査を行ったものです。

 調査前の想定で研究会では、競争や女性に対する差別意識という「伝統的な男らしさ」にとって代わり「新しい男性性」を身につけた男性が、より多く家事・育児に参加しているという仮説を立てていました。

 しかし、調査結果はその逆となり、「伝統的な男らしさ」を持っている男性の方が、家事をする頻度が高いという結論になりました。

 この結果について、関西大学文学部の多賀太教授は、研究会で議論した結果、「男性の適応戦略」であるという仮説にたどり着いたといい、「現代では、仕事のみならず家事なども『男がするべきこと』とみなされている。そうした社会の中で、『競争に勝って“男らしく”ありたい』と考える男性は、仕事・家事の両方に勝ちたいと考えている。そのため、仕事に限らない競争意識のようなものが、職場での女性観と家事頻度の両方に影響を与えているのではないか。」と述べています。

 そして研究会では、伝統的な男性性が必ずしも弱まっていないことから、「男性のケア役割の遂行が増えること自体は望ましいが、手放しで喜ばず、他の領域でのジェンダー平等に与える影響にも注意すべき」と結論づけています。

 わたし自身、この調査結果の分析について基本的に支持したいと思います。
「伝統的な男らしさ」観は現代においても決して弱まっておらず、男性が家事・育児への参加などを含め、多少その頻度が高くなっていたとしても、他の領域では依然として女性に対する差別的な見方や行為が継続していると私自身も考えています。

 以下、基本的にこの視点において、性差別の実態がどうなっているのかについて、私なりに検討していきたいと思います。



☆そもそも男性は家事・育児をするようになったのか?
 
 調査報告書では“家事や育児の頻度”について触れていましたが、そもそも日本の男性は家事・育児をするようになっているのでしょうか。

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 上記の表は、6歳未満の子どもを持つ夫婦の家事・育児関連時間(1日当たりの内訳)を1996年と2016年の2つの年において比較したものです。(※『社会生活基本調査』より作成)
 
 これを見ると、確かに20年前と比較して父親の家事・育児関連時間は38分⇒83分と増えていますが、ほとんどが育児にかかわるものであり、家事に関する時間はほとんど変化がないことがわかります。
 
 育児の時間は確かに増えているようですが、国立女性教育会館(2006)が調査した「日本の父母が子どもと一緒にすること」を見ると、父親が子どもと一緒にする活動は、「一緒に食事をする」「一緒にテレビを見る」など、生活の場を共にすることで必然的に起こる共行動や遊びが中心であり、子どもの身の回りの世話や子どものためにわざわざ時間を使うような活動は少ないことが指摘されています。

 またその関わりは”必然的”かつ”受動的”なものが多く、これらのことから父親の育児に関する時間が増加したと言っても、数字上の伸びほど評価できるわけではないように思えます。

 さらに、1996年においては、男性雇用者と無業の妻からなる世帯と雇用者の共働き世帯の数がそれぞれ937万世帯と927万世帯でほぼ5:5の割合だったものが、2016年には、664万世帯と1129万世帯でほぼ1:2の割合に近づいており、共働き世帯数の割合が圧倒的に増えたことを考えると、やはり父親の家事・育児関連時間の割合は少なすぎることは明らかです。

 2016年時点でも、この父親の家事・育児関連時間は先進国の中でも最低水準となっています。
 2010年には”イクメン”が流行語大賞に入賞し世間を賑わせたこともありましたが、男性の家事に割く時間は圧倒的に少ないというのが本当のところのようです。

 
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