SSブログ

ひきこもりに関する調査結果から

今回の内閣府から発表されたこの、ひきこもりの実態調査をみて、これまでの私の中でのひきこもりのイメージとは異なっていた点がいくつかありました。

【ひきこもりの半数の方が、”友達とよく話し、親友がいた”】
 一つはひきこもりの方が、Q11「小中学校時代の経験」に関する質問において、半分程度の方が「友達とよく話した」「親友がいた」と回答していることです。
 これまでの私の中では、ひきこもる方というのは、小中学校のときから友達と話したことがなく、親友もいたことがなく、人との交流をほとんど経験してこなかった人たちというイメージがありました。友達や親友などつくったことがなく、そもそも人との付き合い方がわからない、そんな風に思っていました。
 しかし、調査の結果では、ひきこもり半分以上の方が”友達とよく話し”、”親友もいた”ということで、ひきこもりの方は友達付き合いをほとんどしてこなかった人たちということではなく、あったけれどもその中で我慢を強いられてきた方々多いということがわかりました。

 またQ27-6「人との付き合い方が不器用でないほうだと悩む」、Q27-7「感情を表にだすことが苦手だ」という質問において、一般の方がどちらの項目についても4割ほどしか”はい”と答えていないにの対して、ひきこもりの方が共に7割の方が苦手だと回答していました。
 ひきこもりの方が、友人関係をもっていながらも、自分の”感情を表に出せない”などの”我慢をする”ことを強いられるような対人関係上の困難を抱えていたことも推測されると思います。


【ひきこもりの85%の方が”就労経験がある”】
 二つ目に、Q14「あなたは働いていたことがありますか?」という質問において、85%の方がなんらかの就労経験がある、と回答していることでした。
 これについても、これまではひきこもりの方というのは主に学校での不登校の延長、つまり学校で人間関係につまづいたことがきっかけで不登校になり、そのままひきこもりになってしまったというイメージでした。

 しかし、ひきこもりの方の85%もの方が”就労経験”があるということになると話は違います。もし不登校の延長でそのままひきこもりに移行してしまったのであれば、就労経験はないはずです。つまり、今現在ひきこもりの状態にある方というのは多くが学校を出た後にいったん社会にでてからひきこもりになったということです。

 また、他の問いで、「ひきこもりになった時期」についての結果では10代前半~30代後半にいたるまで、多少の増減はあるにしろ、ほぼ均等に存在していました。もし学校において不登校が原因で義務教育後、もしくは高校を中退し働き始めたというのであれば、ひきこもりになった時期は10代に集中するはずです。しかし30代に至るまで後半に分布しているということになると、いよいよひきこもりの方と不登校との関連は必然的なものとは考えられなくなるわけです。


【ひこきもりになった理由の半数近くが”就労”に関する要因】
 三つ目に、Q23「現在の状態になった理由」の質問において、就労に関することが要因でひきこもりになったと回答した方が半数近くいたことです。「職場になじめなかった」という方が23.7%存在し、4人に1人は明らかに社会人になった後に、仕事上の理由でひきこもりになった方たちだといえます。

 そしてもう一つ驚いのが、「就活がうまくいかなかった」という方が20.3%も存在していることでした。この方たちがどのような状態で就職活動をしていたのかまではわかりません。新卒と中途では置かれている状況も違いますし、10代と30代後半でもまったく状況は異なります。就活が上手くいかなかった理由についても、詳細はわかりませんが、現在の厳しい雇用情勢、就職難が大きな要因となっているのではないかと予想されます。


【ひきこもりになった背景にある”社会的要因”】
以上のようなことが、今回の調査の結果を読んでみて気づかされたことでした。
この調査結果を読んで、私の中で一番印象的であったのが、ひきこもりという人に対する根本的な見方が変わったということです。それまで私の中では、ひきこもる人というのは、”人間関係を築くのが不得意で、性格が暗く、孤独な人”というイメージがありました。ひきこもりの方に対してそうした見方をしていたことは、知らず知らずのうちに、ひきこもりになった理由をその人の性格や人間性に求めてしまう見方だったと思います。

 しかし、調査の結果はそうではありませんでした。ひきこもりの半数の方は友人関係を築いており、そして半数の方は就労に関することが要因でひきこもり状態に陥ってしまっている。
 つまり、ひきこもりというのは、個人の性格や人間性によるものではなく、就労・雇用情勢などの社会的要因に大きく左右される問題なのだということが今回の調査で明らかにされた一番大事な点ではないでしょうか。
 
 また、ひきこもりになった方の中で対人関係上の困難を抱えていることが多いことは確かですが、そのこと自体も、本当に当事者の責任によるものではなく、社会構造的に困難を抱えざるをえなかった家庭や学校現場の歪みに大きく影響されていることも推測されます。ひきこもりの方がなぜ対人関係上の困難を抱えざるをえなかったのか、このあたりの社会構造的な要因との因果関係についても今後、詳細について調査され明らかになることを期待したいと思います。

タグ:ひきこもり
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。