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居場所と社会参画の間④

「金銭的・人材的に余裕がなく、食えない・評価されないという中で活動すればするほど、活動のモチベーションは自己のアイデンティティを賭けることによって支えられるものとなる。
 
 そして、アイデンティティが賭けられれば賭けられるほど、他との差異を際立たせることで、自分のアイデンティティを賭けた活動の正しさを承認させようとする。
 結果的に、厳しい中でやっている人たちほど、その厳しい中でやっている自分を支えるために、他の活動に対して不寛容になる、というサイクルにはまり込む。活動のストライクゾーンが狭くなる。活動が細分化し、社会のストライクゾーンを広げられなくなる。

 少なからぬ人が、善意に満ち、社会を良くしたいと思いながら自分自身がきついからこそ自己責任論に依拠して自分を支えようとしているように、活動している人たちも、自分自身がきつい中で、強い使命感を抱いていながら、むしろそれゆえに、自分たちの以外の活動を認めなくなる。あそこのああいうところが駄目、という粗探しの構図になる。
 活動は、生きづらい社会を生きやすくしていくオルタナティブではなく、生きづらい社会の縮図となる。それでは、居場所も生活保障も増えていかない。駆け込むべき場所・相談先でも自分をボール扱いした社会と同じ対応をされる人々は、ますます追い詰められ、社会は劣化していく。
 
 そこに希望はない。私たちは、実践レベルでも言論レベルでも、そぎ落とすのではなく受け止める姿勢、叩くのではなく、積み上げる姿勢に希望を見出したい。そして、その総体が、いまの生きづらい社会に対するNOとして立ち現れることを目指したい。」

抜粋: 「若者と貧困-いま、ここからの希望を」― 明石書店 2009
     序章 = 「若者と貧困」を語ること P17~P18 湯浅誠

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