SSブログ

プロセスの重要性について

 これまで生きてきた中でいろいろな人と話をしてきたなって思うけれど、そんな中でときどき「どうも会話が成り立たない」と感じることがたびたびありました。それは時に「社会なんてどうなってもいいよ」をいうなげやりな人であったり、明らかに自分の知識をひけらかしたがっている人であったり、何を聞いても全く反応が返ってこない人であったりと・・。そういう人と出会うたびに、とてももどかしさを感じていたのだけれど、今振り返ってみると、少しだけそう人たちがそういう態度をとった理由が少しわかるような気がする。
 
つまるところ、自分は話し手の要求に本当の意味で応えていなかったのだということなのだろうと思う・・。

 以前、イラク戦争開始後にイラクで日本人の人質3人が拘束された事件で一躍有名になったボランティアの高遠菜穂子さんは自身の書いた「戦争と平和」の中で、平和な世界をつくるための「愛」の重要性を説いています。その部分を引用すると、

「わたしは自分が何をすべきか、どんなスタンスでこの戦争に向き合うべきかを、考えあぐねていた。善とか悪とかという立場でなく、いかにこの事実に『愛』を持って望めるかがわたしにとって切実なテーマだった。戦争への怒りに流されるのは簡単なことだ」

 と述べている。わたしは最初この言葉を素直に受けとれませんでした。なぜなら、『愛』ということばで平和を語るのは抽象的ではないのか、という思いがあったからです。
 しかし、考えていくうちに、この高遠さんの指摘は重要なことではないかという気がしてきました。『愛』、この言葉を、少し前に話題になった”自己肯定感”という言葉と結びつけた時に初めて思い至ることがあったのです。

 最近の若者はよく「自己肯定感」「自尊感情」が低いといわれている。立命館大学教授で臨床心理学を研究している高垣忠一郎氏も著書「生きることと自己肯定感」で「『自己肯定感』は言ってみれば自分が自分であることを支える、『内なる』お守りのようなものである。わたしの見るところ、それを持っていない子どもが少なくない」と指摘している。さらに、同書で高垣氏は「自己肯定感」を「自分を愛する心」と同様なものだと述べています。
 
 このように、この世の中で「自分を愛する心」が育っていない人が多いのではということを、対話をするときに忘れてはならないと思います。なぜなら、「社会なんてどうなってもいいじゃん」という極端にいえば、自分も他人もどうなろうが知ったことではないと考えている青年にいくら平和の重要性を説いても、話が通ずることが困難だろうと思うからです。人は自分が大切にされてきた経験をもとに他人を大切にしようとするものであって、自分が大切にされてこなかった人にとって、どうして他者を大切にしようと思えるかという矛盾が存在するからです。
 
 同様に、自分の知識をひけらかしたいのか、議論をしたいのかよくわからないような人、にとっても同じことが言えます。再び、高垣氏の言葉を借りると、
「共感的な愛が得られない人間は、自己肯定感が感じられない不安や空虚さを補うために、ナルシスティックな『自己愛』に陥り、自分の外見や能力、あるいは業績・地位によって自分がいかに値打ちのある人間かを確認したがる。」 また、
「むしろそういう人は『自分が自分であって大丈夫』という自己肯定感がないから、その空虚さを補うためにそうなるのだといってもよい。よく誤解されるように、自己肯定感が過剰にあるわけではない。自分が愛され、共感され、受け入れられているという手ごたえや安心感がないから、その埋め合わせに過大な賞賛を求めるのだ。しかしその背後には共感的に響きあってもらえない空虚さ、悲しみが含まれている。」
と述べています。

 結局、彼らが何よりも求めているのは、他者からの「共感」であったり、「自分を愛する心」ではないであろうか。

 そうしたことを理解しないで、もし対話をするのであれば、それは結局水掛け論になってしまうであろう。前に紹介した高遠さんの言葉はこのことの重要性を非常によく捉えていると思う。なぜなら平和運動の原点とは「人が殺されてはならない、傷つけられるのは許さない」という人を「愛」する気持ちが前提としてすえられているのだと思うが、いまや他者どころか自分すらも愛せない青年が増えている中で、もし『愛』の存在を置き去りにしたままで対話をするのであれば、その前提条件がないのであるから、話が通じるはずもない。だからこそ自身の平和運動の原点にそうした「愛」をすえている高遠さんの言葉は心に響くものがあった。

いろいろな人と対話をするにあたって、対話の先に得られる”答え”だけでなくそのプロセスにも同じく”答え”というものが存在する、そんなことを思いました。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。