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狂信主義者への処方箋①

「私たちが正しい場所に花は咲かない」 アモス・オズ 村田靖子訳 大月書店を読んで

※下記の詩はこの本の冒頭に掲載されていたものです。
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「わたしたちが正しい場所」

わたしたちが正しい場所に
花はぜったい咲かない
春になっても

わたしたちが正しい場所は
踏み固められて かたい
内庭みたいに

でも 疑問と愛は
世界を掘り起こす
もぐらのように 鋤のように
そしてささやき声がきこえる
廃墟となった家が かつてたっていた場所に

             イェフェダ・アミハイ
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【はじめに】
「わたしたちが正しい場所に花は咲かない」この本は、イスラエルの文学者アモス・オズの「狂信者への処方箋」「正義と正義のぶつかりあい」の2論文と「他者を想像する」というアモス・オズへのインタビューが収録されたものです。
 
 序文で小説家のナディン・ゴーディマが述べていますが、「アモス・オズの声は、いまも続くイスラエル・パレスチナ紛争について、世界中に広まるヒステリックで、でたらめばかりの戯言めいた物言いから立ち上る、正気の声です。」というように、この紛争の本質を”不動産をめぐる争い”と言い当て、解決に当たって障害となっている狂信主義者についての処方箋を提示しています。

最初にこの本を手にとってぱらぱらとめくってみたときに”狂信主義者”という言葉が妙に印象に残ったことをよく覚えています。きっと私の中にも狂信主義的な部分があるんだと心のどこかで感じていたのかもしれません。


【狂信主義者はいたるところにみられる】
 この本を読んでみて特に印象的だったのが、「狂信主義者への処方箋」の中のこんなくだりでした。

「(狂信主義者とは)目立った活動をする原理主義者や熱狂者のことだけを言っているのではありません。明らかに狂信者だとわかる人々-テレビで見かける、私たちにはわからない言語で大声でスローガンを叫びながらこぶしを振り上げる、ヒステリックな群集のことだけを言っているのではない。狂信主義はほぼいたるところに見られます。より穏やかで、一見狂信主義などとは無縁に見える狂信主義は、私たちの周りのどこにでも見受けられるし、ことによると、私たち全員の心の中にあるかもしれません。」

さらにこんな指摘をアモス・オズはしています。


【狂信主義者の真髄】
「狂信主義の真髄は、他人を何が何でも変えてやりたいという願望にあります。隣の家をもっとよい人間にしてやりたい、自分の配偶者を変えたい、自分の子どもを自分の思い通りの人間にしたい兄弟を正しい道に導いてやりたい。要するに、他の人たちをそのままにしておきたくないのです。
ということは、狂信者は飛びぬけて利己的でない人たちといえます。すばらしき利他主義者。自分のことより他人のことにずっと関心があることが多い。あなたの魂を救ってやりたい。あなたをよりよい人間にしてやりたい。・・・あなたの食生活を改善し、飲酒癖、投票の仕方を治してあげたい。あなたのことを大変気にかけています。
あなたのことを本当に好きだから、首に抱きついてくるかと思えば、あなたが救い難いとわかるや、あなたの喉をしめにかかる。いずれにせよ、飛びかかってくる姿勢という点では、首に抱きつくのも、喉を絞めにかかるのも一緒です。まっ、とにかく狂信者が自分より他人の方にはるかに興味があるのは、他でもない、狂信者にはほとんど、あるいはまったく自己というものがないからです、それだけのことです。」


【私って“狂信主義者”?】
この指摘を読んだとき、「あっ、自分って狂信主義者だ(笑)」と思いました。
● 他の人を救ってやりたい
● 自分より他人に関心がある
● 救い難い他人には態度一変
● 自己がない
これ私だって(笑)。



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