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「ポラーノの広場」から②

「ポラーノの広場をつくる人たち-第5回 バスを待ちながら-ズラスという考えかた」岩川直樹より


「教育改革」ということばを聴くたびに、ぼくはあの黒板の絵を思い出す。「改革」「改革」という言う人の多くは、物事を文化とみなす発想が根本的に欠落しているのではないかと思う。 「改革」に伴う「スクラップ・&・ビルド」とか「トップ・ダウン」とかいう乱暴な言葉には、これまであったものをブルドーザーか何かで破壊して、そこにヘリコプターで上から新種の種をばらまくようながさつなイメージがある。しかし、そういう乱暴な上からの一律の「改革」は、たとえその中身をどういじったところで教育は好転しない。むしろ、次から次に降ってくる上からの「改革」は教師を「変革の主体」ではなく「改革の下請け」にすることによって、彼(女)らがこどもや父母とともに長年培ってきた経験や見識を否定する。  変えがたい現実を前にしたとき、手っ取り早い「改革」で上からいっぺんになんとかしてしまおうとする発想は、むしろ文化の土壌の荒廃や生態系の破壊を生みだす。その意味では、「改革」とは、現実を一定の方向に変えようとする、権力者の性急な欲望とそれに依存する人々の弱さから生まれる性質の悪い公害のようなものだ。  しかし、変えがたい何かを変えようとするときに、そういう「改革」の発想とはまったく違う動き方をする人たちもいる。木目のように張り巡らされた現実の中で、自分たちが生きるその場を自分たちにとって豊かだと感じられるほうに拵えなおしていこうとすること。現実の内側からその木目を一つひとつズラシていこうとするような変革のスタイル。文化は「改革」ではなく、むしろそういう「ズラシ」の積み重ねの中にはぐくまれるのではないか。



「改革」という言葉を聴いてまっさきに思いつくのが”小泉構造改革”という言葉かな。あの改革は岩川さんの言う通りのものでした。

  それまで長年続いてきた日本経済の停滞と、希望の見えなくなった自民党政治をなんとか打開したい、そうした人々の願いは、「自民党をぶっ壊す」「官から民へ」という小泉元首相のパフォーマンス的なスローガンに吸収され、構造改革を推進する大きな力になってしまった。

今考えれば、こうした構造改革が断行されてしまったのは、新自由主義的構造改革を推進してほしいという財界の権力者の欲望と、この日本の現状をどうにか打開してほしいという、有権者の依存する気持ちが悪い形でシンクロしてしまい、生み出してしまった結果と言えるのではないかと思います。
 
 そして、小泉構造改革が断行されてしまった結果、その影響で、倒産・失業の増加し、貧困と格差は拡大し、少数のグローバル企業はかってないほどの黒字を計上する一方、日々の生活もままならない人も増えました。


 ”改革”という言葉は、現状に苦しむ人たちにとっては非常に聞こえの良いものだと思います。しかし、岩川さんのいうように、変えがたい現実の中で、いっぺんに何とかしてしまおうという発想は、時に文化の土壌や生態系の破壊を生みだしてしまいます。
 そもそも、変えがたい現実をいっぺんになんとかしてしまう方法というものは、そうあるものではないからこそ”変えがたい”のでしょう。

 こうした中で、私たちが学ぶべきなのは岩川さんの紹介したような、自分たちの生きる場をを”一つひとつズラシて行こうとするような変革”を実践している人たちのスタイルなのだと思います。

 聞こえはいいけれど、無理のあるスローガン的な”改革”ではなく、自分たちの生きる場を一つひとつズラシて行くこと。地道なことだけど、だからこそ土壌にしっかり根ざした、堅実なものであるともいえるでしょう。

 日々の日常の中にも、なにかしら”変えがたい現実”に直面することはあるでしょう。その際に、無理のある”改革”的な行動をとってしまうこともあるかと思います。
どうして”改革”的な行動をとってしまうのか、そこには”ズラス”ことでは納得できず、無理があることをわかっていながらも”改革”を望んでしまう周囲の人への当事者への”依存”というものが存在するのではないでしょうか。
 
 その際に大事なのは、”ズラシ”のスタイルこそ、一見なにも変わっていなそうだけれど、しかし確かに前進しているという視点を持つこと、そしてそのズラシを実践している方々を励ましていくことではないでしょうか。

 物事を変革したいときに”改革”ではなく、”ズラス”という視点に立つこと、その大切さについて学んだような気がします。
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