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若者と政治・選挙②

若者と政治・選挙①では、いまの若者の”政治的無関心”が若者の固有の責任としてではなく、むしろ”社会に守られている”という感覚を喪失していることが原因ではないかと書きました。やはり、問われるべきなのはいまの政治が若者対してどれだけのことができているかということではないかと思います。

 今の若者に対して、政治がどの程度のことができているのかということを見るときに、以下のデータを参考にしてみたいと思います。これは、先進諸国における子どもの貧困率を「市場所得」(就労や、金融資産によって得られる所得)と、それから税金と社会保険料を引き、児童手当や年金などの社会保障給付を足した「可処分所得」でみたものです。もっと簡潔にいうと、税や社会保障制度の政府による再分配後の貧困率となります。(出典:「子どもの貧困」 阿部 彩 岩波新書)

 これは、再分配前の所得における貧困率と再分配後の貧困率の差が、政府による「貧困削減」の効果を表していることになります。

アメリカ       再分配前→再分配後  23% → 18%
イタリア                      14% → 14%
ニュージーランド                 24% → 14%
イギリス                      25% → 14%
アイルランド                   21% → 13%
ポルトガル                    14% → 13%
日本                      11% → 13%
カナダ                       18% → 13%

フランス                      24% → 7%
フィンランド                    15% → 4%
ベルギー                     12% → 3%
スウェーデン                   13% → 3%
-以下略-

 これをみると先進18カ国中、日本は唯一再分配後所得の貧困率のほうが、再分配前所得の貧困率より高いことがわかります。つまり、社会保障制度や税制度によって日本の子どもの貧困率は悪化しているわけです。
 
 他にも高等教育の学費の高さであったり、若年雇用対策にかける費用の少なさであったり、どの政策をみても若年層に対する政府の保障は十分とは言えず、諸外国と比較するとその差は歴然としています。

 日本の政治が若者に対して冷たいということ。これは諸外国のように、政治が若者を実際の施策によって支えているところと比較をしてどのような差がでてくるのでしょうか。

『経済』2008年10月号には座談会において以下のようなことが語られています。

「大学まで税金で学べて、無償で卒業して能力を培った子どもたちは、やがて学んだことを社会に還元しようとか、社会のために働こうとか、共同して社会をつくっていくとか普通のことだと思うでしょう。自分の利益のためだけに能力を使わないで、能力は共同の財産なんだということが当たり前のこととして育っていく国と、そうではなくて、親が死に物狂いで働いて、教育費を稼いで競争的な関係の中で、少しでもほかの子より先に知識を詰め込んで、自分だけは勝ち組になろうと必死にこどものときから生きている国とでは、ぜんぜん違う人間がそだってくるでしょう」

 実際、政治や社会によって支えられた経験こそが、自身と政治・社会との結びつきを意識することに必然的につながっているような状況がヨーロッパをはじめとする国ではあるのだろうと思います。

また「前衛6月号」の「消費税増税へ相呼応する民主、自民、財界」で木口氏は、「ヨーロッパでは国民のながい歴史で培われてきた『税金は貯蓄』という意識、社会保障制度と政府への信頼があることです。・・・社会保障が充実しているために、それを保障する税金が高くとも『納税は国に貯蓄するようなもの』という意識とそれを進めている政府・政治への関心と信頼が広がっているといえます。」

 これらの諸外国の例からわかるのは、政治というものが、若者に対して必要な社会保障なり援助をしているのであれば、必然的に若者は政治や社会に対する関心や信頼を深めてくものだということです。逆にいえば、日本の若者は、政治を通して必要な保障なり援助をうけていないからこそ、政治に関心をなくしているのだともいえるのではないでしょうか。
 
 若者自身に政治の無関心さについてその責任を押し付ける前に、政治が若者に対してできることがあるのではないかと思うのです。

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