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昨今の日本の”人手不足”の実態(1)

【依然として低い日本の有休取得率】

 先日、旅行サイト「エクスペディア・ジャパン」の調査で、日本人の有休取得率が世界19か国中3年連続で最下位になったことが発表されました。それによると、日本のは50%、取得日数は10日ということで、率・日数ともに19か国中最下位だったことも明らかになっています。
 また、有休取得に関して、“上司が積極的ではない”という回答もやはり最下位という結果もあり、改めて国・企業の経営者側がともに、有給休暇取得に対していっそう推進していく立場をとって欲しいなと心から願います。


 【改正入管法と外国人労働者の劣悪な労働条件】

 さて、このように、有休取得率という指標をひとつとっても明らかなように、依然として日本における労働環境というものは総じて劣悪な状態にとどまっています。

 先日、外国人労働者受け入れを拡大する入管法改正案が参議院で強行採決により成立し、来年以降、少なくない外国人労働者が日本に流入する可能性が高くなりました。
 しかし、法案をめぐる審議の中で、ここ8年間のあいだに外国人の技能実習生らが174名も死亡していることなどをはじめ、日本における外国人労働者は、命にも関わるような劣悪な条件で労働を強制されている実態が明らかになりました。

 今回の改正入管法は、こうした外国人の劣悪な労働実態はそのままに、まさに外国人労働者をの人手不足解消の“安上がりな労働力”として利用を目的としていることは明らかです。

 そして、この改正入管法は外国人労働者だけの問題ではなく、ひいては日本人労働者を含めた労働条件の切り下げ競争が今後いっそう進行していくという意味でも、私たち日本人にとっても大きな問題です。決してこうした労働条件の切り下げを許してはならないし、こうした切り崩しに対して声を大にして労働条件の改善を訴えて行く必要があると感じます。

 しかし、安倍首相は臨時国会の閉会における記者会見でも、改正入管法に対し、「国内の中小企業が深刻な人手不足に悩まされている」ことを理由に、改めてその正当性を訴える立場をとっています。
 ”人手不足”と言われるようになり数年が経ちますが、現在の日本において人手不足はどのように、どの程度進行しているのでしょうか。そして、改正入管法の強行採決が、こうした人手不足の処方箋となり得るのでしょうか。改めて検討してみたいと思います。


【日本の“人手不足”の実態】 
(1)人手不足の職種

 最初に検討していきたいのは、いま現在日本において、どのような職種において“人手不足”と言われているのかについてです。

 以下は、厚生労働省の「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」(平成30年10月度)における「有効求人数」「有効求人倍率」の数字です。(※正規・非正規含む)有効求人数が10万人以上の職種において、有効求人倍率が高い順で、上位5位まで列挙しました。

《職種別有効求人者数/有効求人倍率》

① 介護サービス     有効求人数:234,915人 有効求人倍率:4.18
② 接客・給仕      有効求人数:125,647人 有効求人倍率:3.92
③ 飲食物調理      有効求人数:149,813人 有効求人倍率:3.29
④ 社会福祉専門業務   有効求人数:118,548人 有効求人倍率:3.08
⑤ 商品販売       有効求人数:200,402人 有効求人倍率:2.58

 また、有効求人数が絶対数として少ない業種を含めたうえで、有効求人倍率が最も高い職種は、『建設躯体』が 11.08%で最も高く、次いで多いのが『保安』8.32%、そして、『建築・土木・測量技術者』で5.85%という結果でした。

 これらの結果を鑑みると、福祉・サービス業・建設業などの職種において最も人手不足が深刻化していることがわかります。


(2)どうしてこれらの職種は人手不足なのか?
 
 それでは次に、どうしてこれらの職種は人手不足に陥っているのかという問題についてです。このことを知る一つに指標として以下の指標を見て欲しいと思います。
以下の数字は、厚生労働省の「雇用動向調査・平成29年度版」における産業別の離職率上位3位までを表したものです。

① 宿泊・飲食サービス業  :30.0%
② 生活関連サービス・娯楽業:22.1%
③ サービス業       :18.1%

 このように、特に人手不足に陥っている福祉・サービス業においては全職種の中で最も離職率が高いことがわかります。ここから、いわゆる人手不足、正確にいうと有効求人数と倍率が高いのは、就職した労働者が離職してしまうケースが多い、ということが、大きな要因になっているということがわかります。


(3)どうしてこれらの職種は離職率が高いのか?

 それでは、どうしてこれらくの職種は離職率が高いのでしょうか?
 基本的な視点をあらかじめ抑えておきますと、厚生労働省の「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)平成29年度」によると、“前職の離職理由”で「その他」を除く項目で最も多いのが「より良い条件の仕事を探すため」ということで、全体の19.7%を占めています。

 これは全産業における数字ですが、基本的に昨今、日本で離職する労働者というのは、より良い労働条件を求めて離職される方が多いということがわかります。

 そして、福祉・サービス業についてですが、“労働条件”というキーワードからこれらの産業を見れば、どちらも劣悪な状態で働かれている方々が多い職種だということは一目瞭然です。

 一般的に“福祉労働”と言えば、介護・障害・保育などの分野が思いつきますが、いずれも毎日のように事件や事故が報道されている分野ですね。低く抑えられている介護保険における介護報酬、自立支援法の施設報酬、規制緩和により質・待遇ともに切り崩されている保育など、これらの分野は劣悪な労働条件が高い離職率を生んでいることは間違いがありません。

 またサービス業においては、東京商工リサーチ調査によって、厚生労働省が公表した労働基準関係法令に違反した企業の実態調査(2017年度上半期)において、その労働条件の劣悪さが明らかになっています。
 それによると、労働安全衛生法違反について産業別では、建設業35.0%、製造業22.5%、サービス業20.0%とこの3産業で全体の8割を占めており、サービス業は全体の5分の1を占めていることがわかります。
 また、最低賃金法についてはサービス業は全違反件数のうち37.5%を占め、労働基準法違反については32.6%とそれぞれ全業種中1位の割合を占めています。

 このように、労働関連法についてサービス業の遵守率は極めて悪く、労働実態が悪いことは一目瞭然となっています。

つまり、離職率が高かった、建設業・福祉・サービス業ですが、やはりそれぞれの産業において劣悪な労働条件が放置されており、その過酷さゆえ、離職率が高くなっているということは間違いない事実と言えると思います。

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