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”自己完結性”の落とし穴②

”自己完結”している存在としてパッと思いつくのが自衛隊。自己完結している存在が、現実の中で発揮できる力がいかに制限されたものなのかということがよくわかるので、以下の文章を引用します。


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以下引用 「武力なき平和」 岩波書店 著:水島朝穂

「延焼拡大防止を命ぜられても、接近できない、水利確保ができない。こんなくやしい思いをしたのは初めてです。」 神戸市長田区に応援に入った消防隊員に話を聞いたとき、真先に出た言葉である。無線が錯綜して、負傷者を運ぶための救急車が来ない。自ら消防指揮車を運転して、負傷者を搬送したという。

消防、警察、自衛隊では、無線の方式が全く異なる。消防は超短波(VHF)FMを使用。警察は、「グリコ・森永事件」で無線傍受されたことを理由にVHFデジタル無線を使っている。自衛隊は30-60メガヘルツのHF帯(短波FM)を使用しているから、末端での相互交信は技術的に困難となる。それどころか、応援にかけつけた各自治体の消防隊相互でも混信がひどく、交信は困難をきわめたという。電波管理の弱点が、被災地での大きな混乱の一因となったわけである。無線が使えないので、彼の消防車のところに、自衛隊員が走って情報を伝えにきたこともあったという……。

 自衛隊の場合、マンパワーは三つの組織中(※消防・警察・自衛隊)最大である。機動力、不整地・路外走行能力、陸海空全般にわたる大量輸送能力(各種トラック、輸送機、ヘリ、輸送艦等)。どれをとっても、この国最大の組織であることは間違いない。いわゆる「自己完結性」も高い。

しかし、自衛隊は国家の武装組織である。「自己完結性」といっても、それは戦闘後方支援を目的としたものであって、人命救助や災害時の対応のためのものではない。ある装備がたまたま救助目的に使えたとしても、戦闘用の装備を転用しているにすぎない。消防レスキューの救助専門資機材に比べて、作業能率も疑問視されている。しかも、「ルワンダ難民救援」派遣の場合にも問題となったが、この「自己完結性」が仇にもなりうる。旧日本軍が、一般社会を「地方」と呼んでとかく蔑視していたことはよく知られているが、そのような過剰なエリート意識と閉鎖性は「軍」固有のものであり、前述した警察と一脈通ずるところがある。そのため、ボランティア組織との「協働」がむずかしく、どうしても「上からの動員」の色彩が濃厚となる・・・

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