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働くことと自己実現

 -働くことへの根強い悲観的なイメージ-
 いまこの社会の中で「仕事が好きです」といえる人がいったいどれだけいるのだろう。ここ数年、労働に関する言説は悲観的なものばかりが挙げられる。フリーター、ニート、ワーキングプア、貧困と格差・・。誰に聞いたって”働くことは大変だよ”という答えが返ってくるだろう。ましてや”仕事が好き”と心から言える人なんて、仕事中毒じゃないかと疑いたくなるのが実態だと思う。

-仕事につくにあたっての“やりたいこと”-
 いま実際自分は医療事務の仕事をしているけれど、5年前にこの仕事につくことになったのはまったくの偶然だった。大学を一年留年して、特にやりたい仕事があったわけではないけれど、なんとなく子どもに関わる仕事がしたいかなっていうのはあった。不登校やニートや若者自身を悲観的にみる風潮があった中で、そういう若者や子どもに理解を深めていけるような仕事ができたらな・・って漠然に思ってた。ただ実際にそうした仕事に就こうと考えたときに、資格もないし経験もない、何より対人関係にたいする自身のなさが相まって、結局たまたま求人のあった医療事務の仕事についたという結果になった。

 これから社会に出て働くときに、この社会の中で数多在る職種の中で何を選択するかという際にまず考えるのが、”自分のやりたいこと”を仕事にということだろうと思う。ただ実際、厳しい就職活動をくぐりぬけて、結果的に本当に自分が心から好きだといえる仕事に就ける人は一体どれだけいるのだろうか。実際の所そういう人は自分の身の回りにはあまりいない。いたとしても仕事の忙しさや人間関係のストレスを経験する中でいっぱいいっぱいの人がほとんどだ。
 自分自身、自身の希望する職種とは違う職業につき毎日を過ごしているが、そうした人たちが現在就いている仕事に対してどういう思いを持ち、何をやりがいに仕事を続けているのか、そのことについてもっと考えてみたいと思いました。

★”好きな仕事に”という圧力と矛盾★
 そんなときに熊沢誠さんの「若者が働くとき」(ミネルヴァ書房・2006)を読みました。その中にこんなことが書いてありました。


「私は、個人の尊重・個性の発揮ということを、『やりたいことを職業にする』『自分の好きなことを仕事にする』という文脈で語ることに消極的にならざるをえません。今、ここにある仕事は、産業社会にどんなに不可欠なものであれ、とりあえず『おもしろくない』営みが多いのです。がんばれば『おもしろい』仕事を獲得でき、労働の世界でも『自分らしく輝ける』という命題は、忌憚なく言えば多くの若者にとっては空語にすぎません。・・・


 経済的にも自立できるように、若者は20代後半には明確な職業選択をすべきだという命題はやはり否定できないでしょう。しかし、だからといって『自分探し』を果たすこと、個性的に生きること、そのこと自体は決して放棄されてはなりません。しかしまた、そのことは、情報源と見識が限られた故人としての自分がとりあえず感じる『自分のやりたいこと』でなければ続けてゆく仕事にしないという姿勢でよいということを決して意味するものではありません。まれなことながら『好きなこと』を職業にできれば幸せでしょう。
 けれども、仕事にできることとは、自分の好きな行為であるというよりは社会の人々に喜ばれる営みなのです。そして人間はたとえ労働そのものの形態では『おもしろくない』仕事であっても、ある『気づき』に促されて『思い定める』ことがあれば、そうした仕事においても前向きにがんばれる、私はそう考えます。その『気づき』『思い定め』との出会いこそは、人を『勝ち組』に押し上げる資源には恵まれない若者にもできる『自分探し』の成果にほかなりません。


 地味な仕事に就く若者たちに元気を贈るような『気づき』と『思い定め』に至るルートは、さしあたり3つほどあるように思えます。


☆1、社会の人々の切実なニーズに気づいて、それを満たすことに自分でも役立てると思い至ること
→顧客の満足した笑顔にほっとするから、それ自体は単純作業であるサービス業や販売の仕事でも好き、苦しんでいる患者や障害者高齢者の「ありがとう」にかけがえのない喜びを感じるから、それ自体はときにうんざりするお世話も含むようなケアの仕事を続けていける。


☆2、ともにしんどい思いをしている仲間がいると発見すること


☆3、傍楽ということ
→すべては社会の人々の関係こそが自分の役割を自覚させる関係です。もう一度いえば社会と出会うことなしに私たちは自己に出会うことはできないからです。」

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