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PDCAマネジメントについて

1、はじめに ~巷で注目を集めているPDCAマネジメント~

 最近・・でもないかもしれないけど、近年「PDCA」というタイトルの本が書店で並んでいる光景を目にする機会が増えてきたように思います。書店にいっても、何かの研修に行っても、ニュースを見ていても「PDCA」という言葉を耳にする機会が多いように思います。

今回は、この「PDCA」とはいったい何なのか、そして「PDCA」なるものが本当に適切な意味で導入されているのか。もしそうでないのであれば、どのような危険性を内包しているのかについて書いてみたいと思います。

 
2、「PDCAマネジメント」とは?

 そもそも「PDCA」とはいったい何なのでしょうか?

※ウィキペディアより引用

「PDCAサイクルという名称は、サイクルを構成する次の4段階の頭文字をつなげたものである。

1.Plan(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する。

2.Do(実行):計画に沿って業務を行う。

3.Check(評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを評価する。

4.Act(改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて改善をする。

この4段階を順次行って1周したら、最後のActを次のPDCAサイクルにつなげ、螺旋を描くように1周ごとに各段階のレベルを向上(スパイラルアップ、spiral up)させて、継続的に業務を改善する。
事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つ。」


もともとは製造業における品質管理などが目的で、第二次世界大戦後にエドワードデミングによって提唱された手法ですが、現在ではあらゆる産業で導入されており、国や経団連としてもその導入を様々な分野で推奨しています。


3、PDCAマネジメントの誤った導入方法への懸念

 私自身、PDCAマネジメントの存在自体は否定する立場ではありません。
しかし、PDCAマネジメント自体なるものを正しく理解しないで、形式的に導入しているところが多くなってきているんじゃないかという懸念を私自身は抱いています。


「目に見える形での目標管理と成果主義に基づくPDCAマネジメント、すなわち計画-実行-評価-改善という事業活動のサイクルが私達の生活世界に侵入してくればくるほど、失敗はさらに嫌悪されるようになります。PDCAマネジメントでは、失敗は、設定した目標の未達成です。

その総括には自己責任のロジックが求められます。組織やシステムの改善を振り返ることなく、いかに自分が個人的に悪かったのかを反省することばかりが過剰に求められ続けると、自己嫌悪感が増し、結果として組織やシステム全体としての課題遂行能力まで低下するという悪循環が生まれる場合もあります。」

※『いのちのケアと育み 臨床教育学のまなざし』 庄井良信 かもがわ書店 2014年10月

上記の庄井氏の指摘にもあるように、PDCAマネジメントに”自己責任”の論理が結びつくならば、継続的な改善活動(スパイラルアップ)は、逆向きのスパイラルダウンともいえる悪循環が始まっていくのではないでしょうか。

4、デミングの14ポイント~PDCAサイクルの本当の意図~

そもそもPDCAマネジメントの提唱者であるW.Eデミングは、一体どのような目的と理念をもってPDCAマネジメントを唱えたのでしょうか。

国際研究論叢 : 大阪国際大学紀要 25(1)『Dr.W.E.デミングの経営管理-デミングの14ポイントという経営原則-』において、デミングが考えていた経営管理についての14原則が下記のとおり紹介されています。


1.競争力を保つため、製品やサービスの向上を常に心がける環境を作る。最高経営者がその責任者を決める。

2.新しい哲学を採用する。我々は新たな経済時代にいる。遅延、間違い、材料の欠陥、作業の欠陥などの一般常識となっている水準には満足できない。

3.全品検査への依存を止める。品質は統計的手法で向上させる(完成後に欠陥を見つけるのではなく、欠陥を防止せよ)。

4.価格だけに基づいて業者を選定することを止める。価格と品質によって選定する。統計的手法に基づく品質保証のできない業者は排除していく。

5.問題を見逃さない。全体(設計、受け入れ材料、製造、保守、改良、トレーニング、監視、再教育)を継続的に向上させるのがマネジメントの役割である。

6.OJTの手法を導入する。

7.職場のリーダーは単に数値ではなく品質で評価せよ。それによって自動的に生産性も向上する。マネジメントは、職場のリーダーから様々な障害(固有の欠陥、保守不足の機械、貧弱なツール、あいまいな作業定義など)について報告を受けたら、迅速に対応できるよう準備しておかなければならない。

8.社員全員が会社のために効果的に作業できるよう、不安を取り除く。

9.部門間の障壁を取り除く。研究、設計、販売、製造の各部門の人々は様々な問題に一丸となって対応しなければならない。

10.数値目標を排除する。新たな手法も提供せずに生産性の向上だけをノルマとしない。

11.数値割り当てを規定する作業標準を排除する。

12.時間給作業員から技量のプライドを奪わない。とりわけ年次・長所によって評価することや目標による管理は廃止する。

13.強健な教育プログラムを実施する。

14.最高経営陣の中で、上記13ポイントを徹底させる構造を構築する。


というように、デミングが想定している経営管理というものは、自己責任のロジックとは無縁のものであったということがよくわかります。

「OJT」の導入、「強健な教育プログラムの実施」というように社員教育の重要性への指摘、「社員全員が会社のために効果的に作業できるよう、不安を取り除く」努力の必要性、「数値目標の排除」、「生産性の向上だけをノルマとしない」、「時間給作業員から技量のプライドを奪わない」、「年次・長所によっての評価」、「目標による管理の廃止」、そして最後にこれらの13ポイントを徹底するための”構造を構築する責任”を最高経営陣の責任としていることです。

本来PDCAマネジメントは、上記の14ポイントの理念に伴い導入されるべきもののはずです。


5、PDCAマネジメントの正しい実践のために

現在の日本の企業の中で、PDCAマネジメントを唱えながらも、一方で成果主義や数値目標のノルマ管理が導入されている現状では、PDCAは社員を自己責任の論理で常時の上昇志向のパフォーマンスを強要するための論理にしかなりえません。
その将来にみえるものは、生産性・モチベーションの低下と、社員の疲弊だけではないでしょうか。

PDCAマネジメントが、自己責任のロジックではなく、デミングの提唱した理念に基づき認識され、実践が広がれば良いな・・と思います。

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